何故、この国は、家庭用太陽光発電で補助金を受け取っても赤字にしかな
らないのに協力しもっともこれまでに太陽光発電普及に貢献した功労者で
ある1994年から2004年頃までの小規模は太陽光発電設置者をこれ
ほどまでに蔑ろにするのだろうか?

※この時期の人たちは国からの補助金だけでは48円10年の買い取りで
は費用の回収が出来ない。設置年度にもよるのだが、もっとも初期の1
994年度のモニター制度によ設置者の場合、金利分を含めて試算する
と1kwhは140円程度(個人負担分だけで見れば70円/kWh)に
なるので10年の買い取り価格保証期間では設備投資分の回収はかなり
難しい。また、時期にもよるが2分の1から3分の1その後定額補助と
なった補助金自体が費用として掛かったものであるにもかかわらず発電
原価買い取り価格にに反映していないので、国民経済的にみて不健全で
あり、また、地域経済への波及効果等を考えれば、むしろその分の富を
私たちの社会は失ったとみるのが妥当だと思う。

この理由を考えてみると、国策として原子力を推進し産業資本への安価な
電力供給を優先したこの国の電力事業のあり方の根本的欠陥に気がつく。
それは、需要と供給とその設備投資への負担から本来なら決められるべき
電力料金体系を比較検討することから見えてくる。

現在、私たち普通の生活者が支払う電気料金は一般に電灯料金で割安な基
本料金とkWhあたり15円から30円程度までの使用量によって増えて
いく段階的逓増料金制度によっている。一方、大量に電力を使う企業など
は基本料金は高いものの1kWh当たりの単価は15円以下であり、低い
ものの場合は1kWhあたり5円程度と私たちの使う電力の3分の1から
5分の1程度の価格となっている。確かに管理費用等は少なくて済むので
はあるが、自由化の対象となったこの部分は確かに競争原理が働くことで
若干ではあるがその恩恵を受けることが出来ている。

電力の自由化は1994年頃までは全面自由化という方向で検討されてい
たのだが、経産省の中の原子力を推進するグループによって自由化は阻止
された。その結果、これによって一般国民は高い電気代=本来はピーク需
要を作っている業務用等の商業分野が持つべき費用を肩代わりさせられる
事となったとみられる。 特に日本の電力需要は夏季の昼間にエアコン需
要が 伸びることで電力会社の既存のタイプの発電設備の設備稼働率が落
ちることで電力価格は高くならざるを得ないという事情もある。

参考 
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01040115/03.gif
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01040115/04.gif

これは家庭用太陽光発電の宣伝用によく使われるグラフなので見られた方
も多いと思うが、家庭の電力需要は殆どがベース電源需要に近いもので朝
方と昼間に若干増えて、夕方以降に一時的にピークがあってその後、就寝
時に向かって下がっていくというものである。

参考
http://www.kawarasaki.co.jp/_src/sc1193/solar_panel.jpg


一方電力企業の供給すべき社会全体の電力需要は明け方の5時頃に最も低
く、明け方の7時ごろから需要が増えて、昼休みに一時少なくなるのだが、
午後1時から2時を真ん中にピークが出てなだらかに夜に向けて落ちてい
くカーブを描いている。

この電力の総需要に対して電力企業は最大需要に対応する電源を用意し、
その需要に応じてもっとも彼らにとって効率的な設備投資を行うというこ
とになっている。(本来なら、そこには妥当で健全な経営感覚というもの
が株式会社なら働く筈である)所が、この国では健全な経営感覚が生かさ
れる条件が整備されなかったのである。

制度仕組みの面からみれば、この国の場合、特に政治的に独占と引き換え
に原子力という国策が 民間企業である電力会社に担わされたという経緯
もある。また、この独占事業はこれに関わる政治家、官僚、ゼネコン、地
方の有力者、果てはやくざまでの甘い蜜壺と化していたのだ。

これを)監視すべきジャーナリズム自体がきちんと育たなかった、あの読
売新聞を筆頭に他の新聞、テレビマスコミはすべて独占企業であるから別
に宣伝広告する必要のない電力企業から広告費名目で金をもらって問題を
国民に明らかにする作業をさぼってきていたのだ。

今回の福島原発問題で諮らずもその構造が明らかにされた訳で、こうした
独占企業の広告出稿は厳しく禁止されるという法律が作られるべきだと思
う。

さて、物理的な面からみてみる。

それは流通経路が二重投資になると国民経済的にみて無駄であるとのこと
で独占状態が維持された為もある。

電力事業がある程度、その燃料資源を何にするかにもよるのだが此れまで
の既存の発電設備の場合は規模の経済が働くものが多かったので電力事業
は大規模化の一途を辿っていたし、戦時経済体制で一時的にだが日本全体
での集中化が行われたという経緯もある。

固定費としての送電線、発電設備にかかる費用を高くしておいてその総費
用を総括原価で請求できるようにしてある。一方で、変動費で支出される
燃料代を総体的に安くする。そして、販売量を増やすことで利益を上げる
というこの仕組み自体が、企業にとっては合理的ではあるが、電気料金を
持って行かれる電力の需要家には不可解で非合理的である。

これでは、資源枯渇を促進させることにしかならない。こんな利益追求ビ
ジネスモデルが企業活動の真ん中にあるのだから節電や省エネなんて口先
だけのことになるのは当然であろう。これは既存のビジネスモデルを変更
するしかないだろう。

例えば、省エネサービスをすることが利益につながるという仕組みとかだ。
電気の販売量が増えたら利益が減ってしまう仕組みでも組み込まねば彼ら
は販売量を増やすことしか考えなくなるわけだ。ここは思案の為所だ。

此れまでの頭の悪い巨大な発電装置と巨大な総需要が対応する60減ると
と50ヘルツの交流電源システムは時代遅れである。オンサイトの性格も
特性も違う小規模な環境負荷の少ない効率的な分散型電源がいかに効率よ
く組み合わされるのかでずっとセキュりティー の高いシステムを組むこ
とも可能なのだ。

最早、大規模電源で大量に作って押し売りする電力事業が独占である必要
はない、むしろ独占の弊害が出てきている面も多いので、ここはまず発送
電を分離させてどの部分にいくらのコストがかかるのかを可視化すること
から始めるべきだ。ただ、配電費用と言うのは個々にかなり違うのは確か
だ。発電端での発電原価というものだけで見れば原子力は大量にできるの
で安いと強弁もできるが、実は、長距離送電の費用がかかるのでここはそ
の費用も付帯費用として組み込まれねばならない。

何しろ特高と言われる100万ボルトの特別高圧送電線は1km引くだけ
でも1億円と言う費用がかかる。500kmなら500億円だ。因みに北
海道から風車の電気を引く為にかかる費用も同じだ。宮崎の太陽光の電気
を東京や大阪に運ぶのだってそうした費用はかかるのだということは覚え
ておいてほしい。

そうした費用についてきちんと議論もされていない。そういう意味ではオ
ンサイト利用が最も効率的であることは確かだ。まずは自分たちの身の回
りの自然エネルギーを開発利用するべきで、遠くに大規模な発電所を作っ
てそこから持ってくればいいという安易な前時代的発想は止めた方が良い。
また、この仕組みは地域から富を収奪する不在地主が増えるだけの仕組み
だということもきちんと見ておくことだ。安易に自然エネルギーなら良い
というものではない。

こうした資源の分配を適正に行うためにこそ市場を生かすことだ。 市場
とは適正な資源配分が行われるシグナル=指標が明らかにされる仕組みで
あって富の収奪装置であって良い筈は無い。 ここを間違えないように心
しておかねばならない。

安易な補助金が市場をゆがめ適正なコストを実現させずにいることも忘れ
てはならない。特に、太陽光発電の場合は、本来地域社会に還流する購買
力が半分以下に下がってしまってることに気付いてほしいものである。

消費者がコストとしてみる電力料金は、地域社会に買い取り価格で還元さ
れるときは購買力であることを忘れるべきではない。太陽光発電設備は生
産財であって社会に新たに付加価値を生んでいるということを忘れてはな
らない。


> 時事深層
> 手放しで喜べない再エネ法
> http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110902/222416/
> ------------
> 「低炭素社会」条例に 宮城
> http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/miyazaki/news/20110908-OYT8T00138.htm
> ------------
> 再生エネルギーの普及に弾み 買い取り制度が来年7月導入へ
> http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110906/108286/
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> 薩摩川内市 原発と再生エネ両立模索 10月にPT発足
> http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/262193
> ------------
> 行政刷新会議が電力改革案 ライセンス制度など
> http://www.shimbun.denki.or.jp/news/main/20110908_01.html


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