太陽光発電に偏っては困る

2010/7/27付

 太陽光や風力など自然エネルギーでつくった電気の全量を電力会社が買い取る新制度について、経済産業省が案を示した。新しい環境産業を育て、温暖化ガスの大幅削減へ踏み出すのに重要な仕組みだが、太陽光発電の後押しに偏っていないか。

 この制度では、電力会社が支払った分は家庭や企業の電気料金に上乗せされる。試算では開始10年目で標準家庭の電気代は月150~200円増す。家庭や企業が不公平感を抱かないように負担増への理解をどう得るか。風力やバイオ発電などもバランスよく後押しするよう、きめ細かな制度設計が必要だ。

 昨年11月、家庭の太陽光発電で余った分を1キロワット時48円で買い取る仕組みが始まった。新制度の買い取り価格はこれと同じ程度で、家庭用では収支トントン。一方で事業目的でつくる電気も買い取りの対象に加える。大規模に発電すればコストが安いので利益が見込め、太陽光発電会社の参入を促す効果がある。

 家庭の太陽光発電は全部を買い取ると電力会社の支払いが膨らみ、電気料金が大幅に上がる恐れがある。それを防ぐため今と同じ余った電気だけを対象としたのは妥当だろう。

 不可解なのは、風力やバイオ燃料、小規模な水力発電などは同15~20円の一律の値で買い取るとした点だ。バイオ発電はコストが同数十円とまだ高く、風力などと同じ条件では不利だ。コストに応じた値で買い取り投資資金を回収しやすくするのが制度の狙いとすれば、発電方式ごとに価格を決めるのが筋である。

 電気料金への上乗せでも細心の制度設計が欠かせない。電力を多く使う電炉業界などには軽減措置があってもよい。家庭向けでも、低所得者層への配慮などが必要だろう。

 太陽光パネルを取り付けた家庭への補助金は、新制度の導入後も続けるという。だが設置場所がないなどの理由で買えない人からは、購入者を優遇しすぎとの不満も出ている。当面は続けるにしても、いずれは縮小や廃止を考えるべきだ。

 政府は2020年までに国内のエネルギー供給の1割を自然エネルギーで賄う目標を掲げる。この制度を上手に使って自然エネルギーの普及に弾みをつけてほしい

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