先に「全量系統へ繋いでも決して屋根貸しなどではない筈だ 」
と余剰電量のみ買い取りの問題点を指摘するものを書いた。さらにこれを補足
しておきたい。

これについては、経済産業省の全量買い取りプロジェクトチームのヒアリング
の第一回資料にある図によって説明されているのでこれを参照のこと

http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g91130dj.html
のうちの

資料6 NPO法人太陽光発電所ネットワークご説明資料(PDF形式:525KB)
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g91130d09j.pdf
PDF資料の最後から2枚目の図1.余剰方式と図2.全量方式である。

本文には以下の様に書かれている。

> ①余剰電力買取方式と全量買取方式の違い
>
> 参考資料図1.2.の通り余剰電力買取方式は太陽光のグリーンな電力を直接消費
> でき、しかも国全体ではエネルギー自給が5%にも満たないなかで、半分ほどの
> 電力自給が出来る仕組みである。屋根の上の菜園に安心・安全な野菜を自分の手
> で育て栽培することと同じ意味を持ち、普段食べない根っこまで料理して美味し
> いといって食べるように、作ったグリーンな電力を大切にする為に家中のスイッ
> チを家族で消し廻っている。一方全量方式は折角発電したグリーンな電力は全て
> 電力会社に売ってしまう屋根貸し方式である。グリーンコンシューマで見られる
> 産直の豊かさを味わうことなく、自分で使う電力は全部、化石・核燃料の混じっ
> た(ブラウンな)電力を使うことになる。欧米が首を傾げてきた日本国民が自ら
> 進んで身銭を切って高額な太陽光発電システムの普及に励んできた原動力を失う
> ことになる。

そもそもメーターの取り付け位置によって差別化された人間の都合による生
み出された電力の流れに沿って屋根貸しだとか自家消費は意味が在ると言っ
ていると見えるのだが、そうした考え方自体が、自分さえ屋上の菜園で安全
安心な野菜を作れればいいという実に利己的で差別的な考え方で系統に繋が
ることによってその設備が社会化されているということを否定的に捉えるよ
うに誘導する考え方が基本となっている。

多くの太陽光発電設置者は、そうした狭小な考えではなく、「損しない程度
になってきてる。オール電化にするとお得ですよ」などと言う説明などを聞
いた上で『少しでも未来の為にも役立つなら』との判断で設置に踏み切った
ものが多い。

(その為に、設置後に業者の説明ほどには収入が無いなあと思っているが、ま
あ、今更言っても致し方ない。環境に良い事なんだからと諦めているのが実
情だ。これは補助金の復活と余剰電力の買い取りの始まるまでに設置したも
のの多くの感想だろう。私が聞いた限りではまあそうした認識である)

さて、図の説明で図2ではブラウンな電気に混じってしまうと書かれている
が、この説明は間違っている。

理由は、電流は最短の距離を通るので、一度、配電系統に繋がっていても電
力企業から買うメーターの向こう側に繋がっていても多くの「ブラウンな電
力」の発電設備はさらに遠くにあるので、基本的には一番近い発電所からの
電力がメインになる。そして、足りなければ、致し方なくブラウンな電力が
混じってくると言う事になるだけのことなのだ。

国民自らが高額な太陽光発電を身銭を切ってきた理由は、未来に少しでもC
O2や放射性廃棄物を残したくないと言う思いと一応、損はしませんよと言
う電力のオール電化メニューや様々の補助金で何とか元が取れるという業者
の宣伝にしぶしぶ経済的には余裕のある人たちが設置してきたと言うことで、
こうした人を馬鹿にしたことは言われたくないと設置者の多くが思うだろう。

まあ、この説明で全くその通りと思う人は余剰電力のみを10年間買っても
らって自家消費分はグリーン電力証書を発行してその権利を売ってしまい。
単なる屋根貸しとなることに甘んじられるのが良かろうと思う。それは、日
経ECO JAPAN で太陽光発電に関して書いている太陽光発電販売業の岩堀良
弘氏の 『岩堀良弘:発電マンの太陽光発電塾 太陽光発電 民主党が掲げる
「全量買い取り」は本当にいいのか』でも
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20090924/102262/
の中で、

> 例えば、日本では1993年に「系統連系技術要件ガイドライン」が策定されて以来、
> すでに15年にわたる系統連系による余剰買い取りの歴史があります。もはや50万~
> 60万件にもなる余剰電力での既設設置があるのです。この既設者の配線の切り替
> えをするだけでもその物理的・経済的な負担は膨大な量になります。
>
>  今のところ全量買い取りにした場合の詳しい仕様が分かりませんので概算しか
> 言えませんが、現状パワーコンディショナーから分電盤に送られている線を単純
> にメーターに直結するにしても、工事は半日~1日、金額にして最低でも4~5万
> 円はかかると思われます。工事が困難なケースなら10万円程度はかかるでしょう。
> それらの負担を一体誰が負うのかという問題もありますし、そもそも切り替えが
> そう簡単にいくのかということも考えられます。
>
>  もともと日本で開発された余剰買い取り制度は、それ自体は大変優れた制度で
> す。自宅のエネルギーをわが家の屋根でまかなえるということは、将来の電気代
> 高騰に備える個人のエネルギー安全保障という意味において、大変大きな意義が
> あります。私が提唱している「発電貯金」も、余剰電力であるからこそ節約意識
> が高まるのです。
>
>  全量買い取りとなれば、発電した電気はその場ですべて売ってしまうことにな
> り、自分の手元には残りません。つまり太陽光発電システムの設置は「投資」、
> 売電収入は「金利」という見立てになり、それは省エネ機器というよりも金融商
> 品の1つです。単なる「屋根貸し」状態になり、国民的な省エネ運動とはかけ離
> れたものになる危険性をはらんでいます。
>

とほぼ同じ認識を述べている。

しかし、この二つの見方は何れも蛸壺的な発想です。自分のやっていること
だけが人より優れていると言う差別的な感情をくすぐっているだけに見える
のです。元々、このお二方は設置事業者です。本当に自分で一つしかつくれ
なかったどんどん儲かるからとメガソーラーを作るとかこの人に売って儲か
らなくてもどんどん市場が大きくなればそのマーケットで設ければいいと考
えられる方々です。

一つの発電所をつくって大事に動かしてきた人たちの思いは何ら反映してい
ません。私の家の屋根には初年度の設置補助金で作られた稼動後15年の太
陽光発電が動いています。途中、パワコンが壊れました。修理する費用がな
んと40万円近くも掛かりました。これは全部自分で支払ったのです。当然
だろうと言われるかもしれませんが、このシステムの半分は国の補助金で作
られていますから半分は国民、つまりこれを読まれている皆さんの設備なの
です。これが40万円の新たなパワコンを購入しなければ電気を起こすこと
が出来なかったのです。

でも、国や地方自治体は、私が購入した時点よりも遥かに安くなった新規の
設置者に補助金を出しているのです。そして、この補助金は人気があるから
良い事をしているのだと言っているのです。その太陽電池が正しく働いてい
るかどうかなどは興味が無いようです。

そもそも余剰電力の買い取りではCO2の削減量が分からないのです。(推
測で多分これぐらいは発電しているだろうと言う概算の数字は出ますけどそ
れは実績値ではありません)発電量の全量が化石燃料の消費を抑えてその分
CO2を削減しています。それにも拘らず、市場創出という産業側の論理で
物を売ることだけを優先する補助金政策がまかり通っていて、だれが見ても
合理的な派生電力の全量成果評価へは電力企業の経営を圧迫すると言う遠慮
があるのか変わらないのです。

※これは現世代の未来世代へのサボタージュです。未来に付けを先送りして
いるに過ぎません。換言すれば、未来から盗んで来ているということでしょ
う。きちんと費用は現世代が負担すべきなのです。赤字国債や証書取り引
きなど問題を先送り見えなくするべきではないのです。

さて、日本では余剰電力の購入のみが設置者に節約を努力させるので省エネ
効果が高いと喧伝されています。しかし、これも実におかしな話で、屋根を
提供しその設備の費用を負担し電力消費者よりも大きな負担をしている人た
ちだけが省エネを強制させられるような仕組みが素晴らしいと言えるのでしょ
うか?

私はこういう恥知らずなことを言える人たちの神経を疑います。省エネをす
るべきは太陽光発電を設置していようと屋根が無いからと設置できない人で
もするべきことは確かなことです。

もともと、余剰電力購入メニューで売り買いが同じでも節約をするようには
なるのです。それは電力を生産すると言うことに自覚的になるからです。費
用を掛けて電力が作られるから、それが自分の家の屋根に降り注いだお日様
の恵みが電力になったと言う自覚からです。

それを元を取る為に必死で節電するからと言う阿呆なことを言う人たちの神
経が信じられません。人を馬鹿にするにも程があるだろうと呆れ返るばかり
です。電気を使うことに対して何故、太陽光発電をしているものだけが余分
な負担をしなければならないのでしょう?その論理の可笑しさに気がつくべ
きす。

むしろ、全量買取を進め日本よりも北にあって条件の悪いドイツであれほど
の太陽光発電が進んだのは設置年度毎の発電原価を計算しそこに社会の資金
が投じられるだけの条件整備をしたからに外なりません。つまり、借り入れ
てそれが返済可能な価格が保証されたと言う事です。

※この点ではドイツの派生電力への経済評価が高すぎると言う批判ついては、
そもそも為替の変動で高めに出たと言うことと、太陽光発電だけでみると
日本よりも北にあって日射量が少ないと言う点から1割から2割高めに出
ると言うこともあったでしょうし、それに大規模なものまで全てに固定価
格を補償したのでそのコストが高めに出てしまったと言うこともあるでしょ
う。

この為にドイツでは大規模なものが先に普及してしまいました。日本は個人
が間yロウjのためにとやせ我慢をして普及を支えてきたのです。なのに、既
設の設置者の生み出している電力の価値もその費用が3分の1になった新規
設置者の電力も同じ価格なのです。こうした不公平を是正するのではなく、
むしろ、過去の者たちも48円で買われるのだから感謝しろとすら言うよう
な物言いがされることには怒りを禁じ得ません。後出しのじゃんけんを誉め
る、ずるをすることを称揚するようなお金の出し方をこの国はしているとい
うことなのです。(愛国心を謂いするなら愛される国を作る努力をするべきで
しょうね。こんなことではこうした資金の原資となる赤字国債を支払うこと
になる子供たちが信頼する訳がありません)

さて、ドイツでは大規模なものへと傾斜したことの反省もあってオンサイト
発電を奨励する方策を打ち出しています。それは、余剰電力的に繋がるオン
サイト型の場合はさらに価格的に優遇するという支援策が施行されたのです。
これは全量買い取りプロジェクトチームの海外調査の資料に出ています。

http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100128aj.html
の 資料2-1 欧州海外調査結果(PDF形式:637KB)
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100128a04j.pdf
の 13枚目の出ています。

これはまるで日本とは逆です。自家消費を奨励しているのです。その理由は、
大きなオンサイトではない発電所よりも、地域の中にある分散型の発電設備
を優遇するという考え方です。理由としては、発電所を別に作れば配電網の
強化が必要になるからです。大規模な発電所は大規模な送配電設備を要求す
るのです。その点では、系統の中に組み込まれる発電設備は、今後、蓄電池
の性能向上と価格の低下によってセットで組み込まれることで有効に系統の
安定化と効率化に役立つと考えられているからでしょう。

しかし、日本の発想はそうではありませんでした。一方的に巨大な発電所か
ら電気を大量に作って押し売りするという前時代的な発想でしたし、今も、
そのビジネスモデルを温存しようとしているようです。それがどれ程、未来
の富を生み出す力を失わせることになるでしょうか・・・。

確かに顕在化していません。しかし、時代は確実に変わります。発想を変え
て未来をどう創っていくのかが問われているのです。

昨日行われた、全量買い取りプロジェクトチームでの資料に一般人へのネッ
トアンケート調査の数字が載っています。
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100303a04j.pdf

> ○現在の太陽光発電の買取制度における負担の程度である「100円以下」の回答
> が48.5%を占めている。
> ○回答数が最も多かったのは「100円」(22.0%(11,007人))であり、「0円」
> と回答した方も11.5%(5,773人)を占めている。

という数字と共に 負担の受容額としては

> ○「固定価格買取制度」の導入に伴う負担受容額の全体平均は308.13円である。
> ○男女別の平均値では、男性より女性の方が約45円低い。
> ○年代別の平均値では、30代~50代が低くなっている。
> ○職業別の平均値では、専業主婦(主夫)が最も低くなっている。

となっています。また期待感は

> ○全体の69%が「固定価格買取制度」による再生可能エネルギーの導入拡大を期
> 待している。
> ○「固定価格買取制度」の検討において、最も導入拡大が期待されているのは太
> 陽光発電であり、9割以上が拡大すべきと回答している。
> ○地熱発電、風力発電についても期待感が高くなっている。

国民の多くは再生可能エネルギーへ期待を持っており、それなりの負担もす
るべきだと考えているのです。そして、それが、自分たちの地域の経済を支
えることになるのだと分かればもっとその支持率は上がるでしょう。
>
> ○太陽光発電を設置されている方は「負担してもよい」といった回答が多かった。
> 一方で、設置をしていない方や設置の検討をしていない方ほど、「負担したく
> ない」といった回答が多かった。
> ○また、アンケートにおいて「再生可能エネルギーを導入できない人にも負担が
> 発生することは不公平」といった回答が多かった。
> ○そのため、導入拡大のためには、以下の方策等が重要であると考えられる。
> -負担への理解を得るための取組の充実
> -制度の周知を行う広報の更なる充実

太陽光発電を設置しているものはその負担以上に自分へのリターンがあるこ
とを経験的に知っています。そして、設置できない人はその不公平感を持っ
ています。勿論、当然の結果です。

その設置場所の無い人たちに自らの太陽光発電設備設置の可能性を拓くのが
市民共同発電所です。系統に繋がったところに自らの発電設備をもてば、そ
rは自宅の屋根に有るのと同様に、自らの電力を作り出していることになる
のです。

そうした条件整備こそが地方自治体など現場の公共がなすべき仕事です。補
助金をばら撒いて負担の不公平を拡大し、未来の世代に赤字を残すのはまと
もな政策とはいえないでしょう。

太陽光発電の全員参加が一方的な負担のみを強調する経済産業省の宣伝に載
せられてはいけないのだと思います。


コメント

yasai
2010年3月6日17:18

それは 組織にタカルと言うのではないでしょうか

お日様だいすき
2010年3月7日23:10

んですかねぇ。人間の業でしょうか・・・。